第5章 獅子身中の虫


今から15年ほど前から感じていた身体の異変…。「大したことないだろう!」と自分に一喝を入れて忘れるように生きてきた。と言うのも事業の計画も山場を迎えていて、ここで止めるとすべての夢が泡のように消えて無くなってしまうからなのだ。必死であった…

ある夏の日。つまり盆祭りが有った夜のことであった…会場にいた頃から咳が絶え間なく続き、しかも焼き鳥の係りでテント内は煙で充満していた。「ちょっと酷いなぁ…」と思い周りを見渡すと、同じ係りの人は平然な顔で鶏肉をやいている。「何で?僕だけ?…」非常に不思議であった…。てか、身体はもう限界に達していた。「後少し、後少し…」と
念仏でも唱えるようにして居た…。

解放されたのは3時間後の午後10時であった。
やっと辿り着いた我が家のじぶんの寝室に入り我慢していた咳を解放させると、止めようもなく出て、呼吸をする余裕すら与えてくれないまま長い長い時間が過ぎて行った…。
いつの間にか気を失ってしまったのか、気がつくと午前1時であった。嫁は子どもを連れ盆の里帰り…母も弟の初盆で札幌で泊まる。
我が家に居るのは僕だけであった…。
奇跡的に助かった⁇…そんな思いがよぎった。
アレからは致命的な異常さもなく、そのことの事実も薄らいで居た…それから数年が経ち「おや⁇…」と思うことが度々あった…。
動悸、息切れである…。三階まで一気に駆け上がっていた自分にとっては酷いショックな出来事であった…。これを機にドンドンと変化して行く自分に驚きを必死で周りに気づかれないよう隠し通してきた。ある日の出来事が起こるまでは…。

ジリジリ暑い日の夏の日のことであった…妻からの勧めで呼吸器系の開業医に通院をしていた…今日も調子が思わしくなく仕事を中断し病院へ向かった…。慢性閉塞肺疾患…所謂COPDと言われるものである…。原因は長期に渡る喫煙が主たる原因とされているが、最近では様々な要素からも成りうる病と変わってきた。そもそも喫煙者が皆全員掛かる病なのか?と問うと20%の確率でしかないのだ。
コレにはショックであった…。その確率の低い部類に僕が入ってしまったのか…。

何時もより可なり症状が辛い事を告げ、診察に入り酸素吸入を30分くらい毎分で1mlを吸入した。すると嘘の様だった苦しさから解放され心地いい気分に浸ってきた矢先に時間切れ…。止められるとジワリジワリと襲うあの苦しさがまた蘇る…待合室で会計を待ち済ます間でも目は朧、頭は気を失う寸前…。名前を呼ばれ立った時から記憶が途切れた…。

断片的に残っている記憶…救急車らしき物に乗せられている自分…病院へ着いたのかベッドに運ばれたのだが…自体は悪くなる一方…
後で聞いたが、行き先が間違った様だった。
とんでもない話である。リハビル病院じゃ「違うだろー‼︎」(笑)

最終的に落ち着いた所は旭川医大の緊急救命救棟である。可なりの時間があったのか?僕は夢の中を泳いでいるように我が家を見たり中に入ってみたり病院から真っ直ぐ伸びる長い長い一本の道を窓から見てる自分を見てる…。やがて場面は一変し、急に辺りが暗くなり冷たい空っ風が吹き荒れ、枯葉が舞う中を歩いている自分がいる。「寒い!どこかにこの風を凌げられる所はないだろうか!」と辺りを見回す…するとドーンと大きな鉄の扉が2つ並んで立っていた。「何方でもいい、早くこの冷たい風を凌ぎたい!」そんな思いで、何方ともなく重い扉を開けた…真っ暗で何も見えない…「しかし、風は凌げられる」
やがて少し眠くなり暖かくなってきた…。

遠くで声が聞こえる…聞き覚えのある声だ…
目を開けてみる。一点の小さな光が遠くに見える…やがて少しづつ…光は大きくなり近づいてくる…聞き覚えのある声もだんだんとハッキリと聞こえてきた。妻の声だ!
我に返ったように目が覚めた!嫁と娘が3人そこに居た。悲痛な顔をしてしがみ付いて来る…「…俺、どうなったの⁇…」と初めて一部始終を知った…。

この入院を早く抜け出し、自分の仕事である途中の仕上げをしないとと言う思いが先に立った。
それが全ての終わりに繋がる事も美樹生は予知していたかのように遠くを見ていた…。
美樹生

美樹生の窓

【日常のblog】 北海道の片田舎に住むシニアの独り言を語って居ます。幼少の頃から引っ込み思案で中々前に出ないで いつのまにか大人…COPDと言う厄介な持病を抱え農業をリタイア…しかし、立ち位置が変わって見えてきたものもある 果たしてこの先の人生をどう読む…あなたと一緒に考えたい☝️

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